言葉の森を、歩いていこう

本と将棋が好きです。備忘録的な意味合いが強いですが、何かコメントをいただけると励みになります。

詩歌

小林秀雄本居宣長』は歌について次のように言及している。

宣長は、「歌といふ物のおこる所」に歌の本義を求めたが、既述のように、その「歌といふ物のおこる所」とは、即ち言語というものの出で来る所であり、歌は言語の枠であると考えた事が、彼の歌学の最大の特色を成していた。「物のあはれにたへぬところよりほころび出て、をのづから文ある辞」と歌を定義する彼の歌学は、表現活動を主題とする言語心理学でもあった。」

また、夏目漱石漢詩の才に溢れていたことは周知だが、平川祐弘『内と外からの夏目漱石』は東洋(特に中国)と西洋の詩を対比して「東の友情、西の恋愛」と端的に表現する。(詳細はアーサー・ウェイリー『古今詩賦』参照)

その上で平川は日本における状況について、

「ただし同じく東アジアといっても、次の事実を見落としてはならない。中国の詩文こそ男性優位の文学であったが、日本文学は二層構造になっていた、という違いである。」

「日本では文化は漢文の文学と和文の文学という二層から成り立っていた。上層の男性優位の部分は十九世紀の末年までの長い間、強い儒学的影響の下にあった。それというのは文語体の漢文は東アジアでヨーロッパ諸国におけるラテン語のような役割を演じてきたからである。しかし日本の下層部分では常にやまと言葉が用いられた。」

と指摘する。